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第21回日本映画批評家大賞授賞 ::
              日本映画批評家大賞のサイトより抜粋


若い頃、週刊誌記者としてピンク映画の現場を取材していた。
昭和53年(1978)から3年ばかり、わたしはさながらピンク映画記者
だった。 学生時代、ヤクザ映画とピンク映画を観て人生を勉強してい
た者にとって、それは楽しい青春の思い出である。撮影現場に出向き、
撮影終了後の宴会で女優さんと話が出来るのも嬉しかったが、スタッ
フの人たちのピンク映画からロマンポルノに活躍の場を移した女優さ
んの話が聞けたのもいま思うと楽しい思い出となっている。
皆、成長し嫁に出した可愛い娘を語るように、ピンク映画時代の白川
和子さん、宮下順子さん、 谷ナオミさんの話をして聞かせてくれた。
わたしがよく顔を出した、S組の撮影部のカメラマンNさんの話に頻繁
に登場したのが白川和子さんだった。 この人に酒が入り語る白川さん
のことを聞いているうちに、いつしかわたしも白川さんのファンになっ
ていた。
白川さんといえばにっかつロマンポルノの記念すべき第一作、昭和46年
(1971)11月10日公開の『団地妻昼下がりの情事』(西村昭五郎監督)
の主演女優として知られるが、ロマンポルノ女優として活動したのは
1年半で、 主演作品は20本である。
引退作は昭和48年(1973)2月公開の『実録白川和子・裸の履歴書』
(曽根中生監督)。この映画で、演劇少女が、どのようにしてピンク映
画に出るようになり、足掛け5年で200本ものピンク映画に出演、そして
その後どうしてにっかつロマンポルノへと転身していったの事細かに描か
れているのだが、ピンク映画に入って知り合ったカメラマンと親しくなり
同棲するシーンがある。そう、そのカメラマンこそ、わたしに白川さんの
魅力を教え、ファンにしてくれたカメラマンのNさんだったのである。そ
んなこともあって、白川さんが出演する作品を観ると、その度にいまもわ
たしはNさんのことを思い出す。